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8月 わすれまい先人の労

印刷 文字を大きくして印刷 更新日:2001年8月1日更新 <外部リンク>

 8月はお盆の月。先祖供養とともに、先人の労苦や貢献に感謝の念をもち、ふりかえりたいものだ。
 「おまえの叔父さんはマリアナ海溝に眠っている」と聞いたのは小学生のころだった。祖母が訥々と語った。太平洋戦争グアム海戦で玉砕した。正義感が強く、優しかったことは、遺影からもうかがわれる。遺骨もなく、祖母は叔父のはがきを肌身離さず携えた。紙の色は変わり、角が丸くなり、すりへったはがき。抱くように懐にしまい、何度も何度も取り出しては読んだのだろうと、子どもながら直感した。赴任前の慰問の時、弟を連れてこなかったことに叔父は不満だったと祖母がつぶやいた。「あとを頼むぞ」「しっかり努力しろ」と伝えたかったのだろうと叔父の実弟が回顧する。
 そういう別れをして帰らぬ人となった先達がいる。その存在なくして今日の日本はないのだろうと思う。
 知覧の特攻平和祈念館に残された遺書、絶筆、日記を見ると涙で字が揺らぐ。涙が湧いてくる。絶命を前に自己を奮い立たせた動揺も伝わってくる。それなのに家族を気づかい、未来を思う言葉が残る。その言葉が家族に運んだ重みは計り知れない。我が子の死を犠牲にせぬようにと、ひたむきに懸命に生き抜いた人々。そのおかげで日本は半世紀の復興と繁栄を遂げた。
 その不屈の精神や、苦境にあっても他者をいたわる心を忘れまい。美化するのではない。だからこそ平和を感謝し、世界平和を希求し、被爆国として努力すべきだ。