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9月 映画に出演して

印刷 文字を大きくして印刷 更新日:2001年9月1日更新 <外部リンク>

 「市長さん、映画に出てください」との依頼が舞い込んだ。日本に渡海し、多久で暮らし、藤の川内などで窯を開き、18年間陶石を探した李参平の半生を描く『白神渡海』(小川益王監督)という映画である。私の役は竜造寺家久(後の多久安順)である。
 撮影は8月15日の朝から夜までだった。佐賀城で参平が鍋島直茂に会い、多久の竜造寺家久に預けられる場面の撮影では韓国俳優・呉光禄さん演じる李参平をみつめつつ、時代の同席者になっている自分を発見した。心の奥底で「参平さん、がんばれ」と叫んでいた。
 撮影では発見もあった。カメラに見えぬ空間に撮影を支える人がいるのだ。音声担当は腕っ節強くマイクを支え、照明担当は画面に見えぬ足場を捜す。庭木の蝉も追い払う。それでもトンボが飛び、蝶が舞い、蝿や虻も画面に飛び入りする。はたまた誰かのお腹が「グー」と鳴る。その度に「もう一度!」と続く。
 支える人あっての主役と映画だと直感した。皆でいいものを創ろうという思い一つでまとまる現場の空気は心地よい。「映画は我慢と継続です」と是琢和尚役の沢りつおさん。場面を支える人、場面を生み出す熱意、それぞれの存在が渦を巻き、暑さをも忘れさせる。
 世の中で人知れず支える人は多い。その尽力への感謝とともに、一人ひとりが重要な存在であることを忘れてはいけない。また、李参平が多久で育ち日本文化に創造を加えたことを記憶し、誇りとしたい。