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7月 少年の夢と人生のゴール

印刷 文字を大きくして印刷 更新日:2004年7月1日更新 <外部リンク>

 作家・滝口康彦先生がご逝去された。
 「小学6年のころ文士を夢見た少年…」の記述が傑作集巻末にある。康彦少年はその夢に向けて全力疾走した。多久に在住され、人生と格闘した筆力で無類の時代小説を残された。その実力と功績を惜しむ盟友の作家・古川薫氏は、霊前に語りかけられた。またご長男は「まるで家族全員の病を引き受けたようだった」とも話された。作家に筆やペンは不可欠。だが病魔はそれを奪い、闘病は19年に及んだ。それを思うと言い様のない悲痛を感じた。お元気なら「ようこそ先輩・多久版」で子どもたちに文学や小説家を語ってもらいたかった。
 また、吟詩道で会発足から50年にわたり活躍され、記念式典をされた田久保豊明先生も逝去された。ここまで全身全霊を注がれてきたことがご遺族のお話からも伝わってくる。ご子息が「古武士のようだった」と偲ばれる御姿も、幕末の志士たちの留魂に近いとすら思えた。
 再三のこんな話で、読者の方も奇異に思われるかもしれない。でもよくよく考えれば、私達は最期の瞬間を目指し走っている。自分の夢、理想、希望に向かって。あるいは余裕なく日常の事に追われつつ過ごしてもいる。でも、何気ない日常の中で多くの支えに恵まれていることを思い、自分にできることに努めることが大切だ。
いかなる時も、人間愛と誠意と希望を忘れず、できる時に、できる事に精一杯努める。それはきっと地域に、家庭に、交友に、潤いと魅力を与えてくれる。(とし)