先日利用した飛行機の機長アナウンスでのこと。「少し揺れますが、まっ……たく問題ありません、ご安心ください」。この機長アナウンス、実は「まっ……たく」の間の入れ方が絶妙だった。思わず隣席の人と笑顔を交わし「なかなかですね」と語り合った。しかも、これで終わりではなかった。再度の揺れでも「まっ……たく安全です」。またも隣席者と笑顔になった。
キャビン・アテンダント(スチュワーデス)に「この機長さんはいつもこのように話されますか」と尋ねると、「はい、それで有名な方です」の説明。なるほどそうかと感心した。
目的地に近づき機体が下降し始めると「見上げれば、北斗の七星やカシオペアなど天空の星座の星々が皆さんのフライトを見守っています」。まるであのジェット・ストリーム(ラジオ番組)の語り。着陸時には「では一句」も。その度に機内で歓声が響く。その粋な配慮への感謝のミニカードを乗務員に託した。
おまけもある。到着して空港ビルに横付けされ降機すると、ボーディングブリッジの小窓で乗客が手を振っている。その視線の先には操縦席で手を振る機長。通路でも機長に手を振りながら降りていく乗客。疲れも忘れる爽快感。皆笑顔だった。
この出来事はさまざまなことを教えてくれる。機長の仕事は、乗客を安全で予定通りに目的地に届けること。それは全ての機長に同じ使命、同じ仕事。その同じ仕事に人と違う工夫をして、より多くの人々を笑顔にする。それはもう同じ仕事ではないと気付く。できることで常に少し工夫する愛情。皆がそんなささやかな工夫を重ねれば、幸せのスマイルは広がる。(俊彦)